清水:僕は現役当時、「死んでもいい」と本気で思ってました。そう言うと、「覚悟」なんていう簡単な言葉でまとめられてしまいますが、本当にいつも、「明日、トレーニング中に死んでもいい」と思ってたんです。

 僕はぜんそくを持っていて、幼少期から死にそうな思いを何度も何度もしてきたので、たぶん、苦しいことと向き合うことに割と慣れていたというのもあるでしょうね。高校2年生の時には、父ががんで亡くなって。人っていつ死ぬかわからないな、と。だから、毎日は無理でも週に1回か2週に1回は、限界を超える日を設けようと思うようになりました。

石川:最近の脳科学のブレークスルーには「疲労や限界という感覚は脳が作り出した幻想だ」という考え方があります。「限界」と思ったところを超えることで、脳がその状態に慣れていくらしいんです。

 僕らはすごく勉強するんですけど、1日10時間の勉強って普通はできないんですね。僕はそれを1年半続けたことがあります。だんだん足の筋肉が衰えて、ちょっと下品ですけど、立ってオシッコできなくなるんです。立ってオシッコできるうちはまだまだ甘い、と。

清水:えー(爆笑)。

石川:最後には、トイレから立ち上がれなくなりました。だから、トイレに座って、そこからちゃんと立ち上がれるうちはまだまだだな、と。

清水:1年半も限界を超え続けたなんて、すごい。

石川:清水さんはプレッシャーにすごく強かったですが、やっぱり慣れですか。

清水:そう思います。もともと僕はそんなに強くなくて、昔は試合前に吐いたり食欲をなくしたりしていました。でもある時から自分で意識して、プレッシャーの中に何度も何度も踏み込んでいくようになった。その中で先ほどお話ししたメンタルリハーサルのやり方などを身につけていったんです。

石川:スポーツも勉強もビジネスも積み重ねですね。

清水:僕はまだビジネスの経験が足りませんが、一つ一つ限界を超えて事業を大きくしていきたいです。

(構成/編集部・石臥薫子)

※AERA 2018年3月26日号