清水宏保さんが長野五輪で取った金メダル。誕生日が同じだと知った石川善樹さんは、「友達に自慢しまくった」という。二人は、スポーツとビジネスに多くの共通点を見いだした。
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清水宏保:僕はアスリート時代、あまりいろんなことを言語化したくないと思っていました。右脳でとらえている「感覚」をあえて左脳がつかさどる「言葉」に変換する作業はすごくエネルギーがいるし、言葉にするとかえって感覚が鈍るということもあったので。
石川善樹:確かに、「言語化すると技術が鈍る」という説はかなり言われています。特にフォームが大事なスポーツでライバルのパフォーマンスを落としたいなら「あれ、フォーム変えた?」って言うだけでいい、と。
考え始めちゃうと、調子が狂うらしいですね。言語化とはつまり、要素を分解することなので、技術や感覚を「全体」としてとらえたい時には向かないのでしょう。
清水:確かに。僕は言葉にするより内に秘めて、周囲から見れば何を目指しているのかわからないようにしてましたね。それで低空飛行から一気に上昇気流に乗って、結果を出すみたいなことが好きでした。
石川:これは(元陸上選手の)為末大さんが言っていたことですけど、最近のアスリートはしゃべりがうまい、と。そういうことは感じますか。
清水:自分とは違うタイプの選手が増えていると思います。今の子たちはふだんからマスコミ対応の練習をしているし、「自分発信」という意識も強くなっています。
石川:インターネット時代のいまは、発信するとフィードバックがある。あれで鍛えられてるんじゃないのかな。外国人コーチも増えてますよね。
清水:スピードスケートはまさにそうです。
石川:苦手な第二言語で話そうとすると理屈が整理されるということも、昔から言われています。外国人コーチとのコミュニケーションが増えたことが、客観的に話せる要因になっているのかも。ビジネスの世界でも楽天が社内公用語を英語にしたりして、スポーツの世界と同じことが起きていますよね。