銅メダルを掲げる(左から)藤沢五月、本橋麻里、鈴木夕湖、吉田夕梨花、吉田知那美=北村玲奈撮影 (c)朝日新聞社
銅メダルを掲げる(左から)藤沢五月、本橋麻里、鈴木夕湖、吉田夕梨花、吉田知那美=北村玲奈撮影 (c)朝日新聞社
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 はじける笑顔と、「そだね」に代表される短くて速い言葉のキャッチボール。カーリング女子のトレードマークだ。意外にも、平昌五輪では好調と言える状態ではなかったという。銅メダルは、コミュニケーションの賜だ。

*  *  *

 浮かんだアイデアをポンポンと口に出し、反射のように相づちを打ち合う。

 例えば、こんなふうに。

「奥に置くのがいいかな」
「そだね」
「この石、先に打っとくのもあるね」
「悪くないね」
「とりあえずやってみよっか」
「オッケー」

 そうこうしているうちに、カーリング女子日本代表、ロコ・ソラーレ(LS)北見の作戦はまとまっていく。

 この会話は胸元のピンマイクを通じてそのままテレビ中継され、平昌五輪では日本勢として初めて銅メダルを獲得。爽やかなインパクトを残した。

 ただ、現地で取材していた多くの記者たちは、「メダルは難しいんじゃないか」と予想していた。リードの吉田夕梨花(24)、セカンドの鈴木夕湖(26)、サードの吉田知那美(26)、スキップの藤沢五月(26)はいずれも、絶好調というわけではなかった。実際、ショットの精度を示す「ショット率」は1次リーグで75%、出場10チーム中9位だった。

 だが、チームの一番の武器にスランプはなかった。それが、「コミュニケーション」だ。

 カーリングは1チーム4人でプレー。1エンド(野球でいう回」)に2チームが交互に八つの石を投げ合って、10エンドで争うスポーツだ。

 リードと呼ばれる選手が1、2投目、セカンドが3、4投目、サードが5、6投目を放ち、最後の7、8投目をチームの司令塔でもあるスキップ(フォース)が担当する。

 各エンドで円の中心に最も近い位置に石を置けたチームに、石の配置に応じて得点が入る。狙った位置に石を置くために、スキップは石の軌道が合っているかを見て、ブラシを持った掃き手2人は石の速さを見て止まる位置を予想する。「ヤップ(掃いて)」「ウォー(掃くな)」などと合図を出し合いながら、投げ手だけでなく4人全員で好ショットを作る。

「時間との戦い」という側面もある。

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