各チームの持ち時間は1試合38分。1投にかけられる時間は単純計算で28.5秒に過ぎず、時間に追われて終盤の試合運びが雑になってしまうチームもある。いつも通り、短く速い言葉のキャッチボールを繰り返したLS北見は、狙いや、狙いを外した場合の「Bプラン」への切り替えへのイメージ共有が実に円滑だった。

 例えば、3位決定戦の英国との第5エンド。鈴木の投げた石が、狙いとは違う石に当たってしまうミスがあった。

「滑ってはいるよ」
「ちょっと長くなった」
「ヤップ(掃いて)」
「ゴー」
「もうちょい」

 と呼びかけ合い、ブラシを持つ吉田姉妹は途中から掃き方を変えた。藤沢も駆け寄って氷を掃き、結果的にもともとの狙い以上の好位置で石を止めた。

「最高のBプランになった!」

 吉田知は驚くように笑った。

 常におしゃべり好き、なわけではない。選手一人一人に会えば、底抜けに明るいわけではないことも分かる。4人とも、どちらかと言えば繊細で、慎重な女性たちだ。

 スキップの藤沢は、「考え過ぎちゃうタイプ」と自己分析する。2015年にLS北見に移籍するまでは、

「プレー中は、最後に投げる私が何とかすればいい、と背負い込んでいた」
「私さえ良ければ大丈夫だから、と思っていたのかも。チームメートに頼る勇気がなくて」

 LS北見では、試合中だけでなく試合後も必ず話し合いの場が設けられた。話し合うのは、「何を考えて打ったショットだったか」「どんな情報が足りなかったか」。反省会は平均1時間以上で、泣きながら4時間近く語り合った日もある。そうして互いを知っていくうちに、藤沢は徐々に変わっていった。

「頼っていいんだなって気づかされた。完璧じゃないからこそチームがいるんだなって」
「1人で戦っているわけじゃないって分かって、すごく楽になった部分がある」

 どうしても思い通りのショットが打てない時は、

「悪い状態から調子を上げようと思うんじゃなくて、今の状態でも勝てる方法を探せばいい」
「今の自分、今の私でできることは何だろう」

と考えているという。

(朝日新聞スポーツ部・渡邊芳枝)

AERA 2018年3月26日号より抜粋

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