本書では「ファンダムの商業化」「ファンダムが炎上するとき」「個性とファンダム」といった切り口で、ファンダムの歴史や変化を検証していく。
「本の冒頭で19世紀のアメリカで起こった〈音楽狂〉の例を紹介しましたが、他にも宗教は伝統的なファンダムだと考えられます。15世紀の寓話作家、マージェリー・ケンプは、マリアやキリスト、新約聖書の登場人物の冒険を描く、今で言う“ファン小説”を大量に書き残しています。歴史のなかで、ファンダムはずっと存在していました」
SNSによる変化を挙げればファンダムを成立させるための人数が減り、同好の士を見つける時間が短くなったこと。インターネットのおかげで、誰かにつながることも成果を見せることも簡単になった。同時にテクノロジーの発達によって、プロのレベルに達する二次創作をするアマチュアが増えているのは「コンテンツクリエーターにとっても素晴らしいこと」だと言う。
「これからますますファンとファンオブジェクト(対象)の距離は縮まっていくでしょう。ファンの創作物が公式作品の一部になるような未来が、すぐそこに来ているのだと思います」
(ライター・矢内裕子)
※AERA 2018年3月12日号