親の生活の方向づけを決めるのは、きょうだい全員に共通した選択・決定です。後悔のないように、あまり対立することなしに話し合いを進めるために、私は、「お手間ですが、みなさん、集まってください」とお願いしています。
家族や親族の話し合いは、時間と場所を同じにして開催します。一堂に会することなく進めると、「あとで電話で聞いた」「だれそれがなぜ、先に知っている?」「決まったあとに言われても」「それより先に言った」などと判断がつきかねる言葉の応酬になってしまいます。過去の家族間の確執や相続の問題がからんできたりして、それこそテレビドラマで見るような事態に陥ることも。
集まったその場で腹蔵なく意見を出し合うこと、そして、第三者としてケアマネジャーなどがそこに加わることで、誤解や曲解、忖度(そんたく)や水面下での駆け引きのようなことを減らすことができて、納得のいく結論を出しやすくなるはずです。
■「口・手・お金、あなたはどの役割を担いますか」
親の介護を考えるとき、夢と希望と、現実の両方をみるために葛藤が起こります。夢と希望は「おかあさん(おとうさん)のこれからの生活を快適で安全なものにしてあげたい」という、大切な人を大切に扱う気持ちです。現実とは、それを実現するために口・手・お金を提供することです。
一堂に会した家族・親族の夢と希望はおおよそ一致しているでしょう。しかし、口・手・お金の提供については異なります。私はその場で、「あなたは口・手・お金の、どの役割を担いますか」とはっきり尋ねることにしています。
当然ですが、ただ思いつきだけで「口」を出す人の立場は弱くなります。きちんと「口」を出すために、情報収集やリサーチを行うといいかもしれません。実際に世話をする「手」の人は、親の現状を最もよく把握していて、施設入居の是非やタイミングなど、大きな決定場面では重要な役割を担うでしょう。しかし、決定に大きな影響力をもつのは、やはり「お金」の人になるケースが多いようです。