※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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親を施設に入れるか入れないか、相談を続けるなかで子どもたちきょうだいの意見が合わないこともあります。意見の対立が深まって、「自分勝手なことばかり言う」「そんな人だとは思わなかった」と険悪なムードになることも。「きょうだいの話し合いは、全員集まったうえでおこなうべき」と介護アドバイザーの高口光子さんは言います。トラブルなく事を進められるコツを、うかがいました。

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■突然現れたきょうだいがけんか腰の面会

 親を施設に入れるか否か。老いた親のこれからの人生を子どもたちで決めなければならないのですから、責任は重大です。親の意見も聞き、さまざまな条件を考慮していざ決定となったときに、それまで沈黙していたきょうだいから突如、反対意見が出されることも少なくありません。

 私が相談を受けたケースで、こんなことがありました。

 両親が離婚して、小学生のころに長男は母親に、次男は父親に引き取られ、以降、会うこともなく成長した子どもたち。母親は85歳になって一人暮らしが難しくなり、長男の判断で高齢者ホームに入居しました。そのことを遠くで暮らす次男に知らせると、「それぞれに親の面倒をきちんとみることがおれたちの役割のはずだ。母を施設に入れるなんて許さない」と、たいへんな剣幕で施設に押しかけてきました。長男は、母親がエアコンをうまく使いこなせなくなって部屋でこごえていたこと、廊下で転んで起き上がれなくなっていたことなどを説明し、施設入居はよりよい介護生活を求めてのことだと丁寧に説明しました。なかなか怒りのおさまらなかった次男ですが、時間をかけての説明と、施設での母親の穏やかな暮らしぶりにふれて、ようやく納得。最後は、「おれも母さんに会いにきていいか」と問う次男に、「当然だろ」と長男が答え、兄と弟は和解しました。

■全員集まって話し合うことがなにより大切

 きょうだいは、それぞれに独立して、社会人として家庭を築いたり、仕事をしたりして、それぞれの価値観と環境のなかで生きてきています。意見が異なるのは当然のことです。

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高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

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