2月26日に金メダルを首からさげて凱旋帰国した羽生結弦。自身の連覇を「漫画の主人公にしてもできすぎ」と話したが、専門家は羽生の中に、70年代少女漫画の魂を見ていた。
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「ユヅルー、ハニュウ」
その名前がコールされると、会場からひときわ大きな拍手と歓声が起こった。2月25日、平昌オリンピック最終日。フィギュアスケート・エキシビションのトリを飾った羽生結弦(23)は、氷の感触を確かめるようにゆっくりとリンクに立った。
サンサーンスの「白鳥」にイタリア語の歌詞を付けた「ノッテ・ステラータ(星降る夜)」に合わせ、指の先まで丁寧に舞う。演技が終わるとほおを紅潮させて少しだけ天を仰ぎ、つぶやいた。
「ありがとう」
この日一番の歓声が響いた。
野球やサッカーなど1千人以上のプロアスリートのメンタルコーチをしてきた鈴木颯人(はやと)さんは羽生について、
「ここまで万人に応援されるアスリートはまれ」
と話す。鈴木さんによると、多くの人に応援されるキャラクターかどうかが、アスリートとしての成長を大きく左右する。いくら実力があっても、人間性が備わっていないアスリートには早晩限界が来て、やがて消えていく。応援は時には重圧にもなるが、羽生はそれを自分への追い風に変え、66年ぶりの五輪連覇を成し遂げた。
金メダル翌日の記者会見では、こう言ってのけた。
「4回転アクセルを目指したい」
鈴木さんは言う。
「プレッシャーもあったはずなのに、それを一切見せない。結果を出した自分を素直にほめ、純粋にスケートを楽しむために次の目標を口にする。異次元のメンタルの持ち主だと思います」
明治大学国際日本学部の藤本由香里教授は、こうした羽生の鍛錬の末の「透明」な精神が、多くの女性ファンを魅了する要素になっていると指摘する。藤本さんは、羽生にどこか、少女漫画に登場する「永遠の少年」を感じるという。