ウー:福山さんはとても楽しい方で、撮影中も現場の張りつめた雰囲気をなごませてくれるんです。常に気配りをしながらいろんな人に優しい言葉をかけてくれて、部下役の桜庭ななみさんにも、リラックスできるように声をかけていらっしゃいました。私の娘に対しては、非常に無残で冷徹な仕打ちをするんですけどね(笑)。
福山:そう、今回、監督のお嬢さんのアンジェルス・ウーさんが殺し屋の役で出演されていて、僕の敵役なんです。
ウー:二人の戦闘シーンを撮り終わったあと、福山さんが申し訳なさそうに私のところに来て「すみません、娘さんを殺してしまいました」と謝るんです。
福山:だって、いくらお芝居とはいえ、監督のお嬢さんを手にかけるというのは、やはり胸が痛むわけですよ(笑)。
ウー:私は「大丈夫ですよ、彼女はちゃんと生き返りました。ほらほら、私に向かって歩いてきましたよ」と答えました。本当にファミリーのような現場でした。
──再びタッグを組むとしたら、どんな作品がいいですか?
ウー:時代劇をやりたいですね。宮本武蔵とか。
福山:ジョン・ウー監督が撮る宮本武蔵! それは観たい!
ウー:実は少し前に、日本の脚本家に、日本語で脚本をお願いしたんです。
福山:ええっ!?
ウー:若き時代の宮本武蔵の物語です。でも、東日本大震災以降、プロジェクトは中断しています。若いころの宮本武蔵は戦いの日々でしたが、晩年は戦法に関する本を書いていますね。『五輪書』という。
福山:はい。
ウー:中国の『孫子兵法』に相当する素晴らしい本です。そういう歴史も、私は調べて準備をしていました。
福山:監督、その話、僕が進めてもいいですか?(笑)
ウー:じゃあ、僕のほうからも脚本家に催促してみますよ。
福山:若き宮本武蔵かぁ……いや、僕、もう若くないんですけど、間に合いますかね?
ウー:大丈夫、福山さんは永遠に若いですよ。
福山:ぜひ早めに、実現に向けてお願いします!(笑)
(構成/ライター・中村千晶)
※AERA 2018年2月12日号