福山:恐縮です。日本の警察官は柔道か剣道のどちらかを必ず学ぶんですよね。日本の警察を描くうえでの独自性かなと思ったし、本当に差し出がましいんですけど、提案させていただいたんです。
ウー:素晴らしい提案でした。まるで昔の武侠(ぶきょう)映画を彷彿させてくれるような美しさで、映画に華を添えてくれました。窓を飛び越えて身体を反転させながら銃を撃つシーンもよかったですね。あれはチョウ・ユンファでもできないですよ。
福山:いやいや(笑)。この撮影はとにかく、スケール感もすごかったんです。製作日数も参加人数も僕が経験してきたものをはるかに超えていた。だからプレッシャーも感じましたけど、それ以上に、役者を本気にさせてくれる現場でした。
──苦労したシーンは?
福山:大阪の堂島川での水上バイクのシーンですね。水上バイクって、陸上のバイクとは全然違うんですよ。トラクションのかけ方も操作性もまったく違う。それを操縦しながら英語のセリフを言い、相手のバイクに飛び乗ったり相手に銃を向けたりと、初体験のてんこ盛りで、まあ、脳が痺(しび)れました(笑)。
ウー:あれは難しいシーンでしたね。現場で水上バイクの免許を持っているのは、福山さん一人だけだったのです!
福山 はい、免許取りました。
ウー:おかげで非常に説得力のあるシーンになりました。
福山:大変でしたけど、自分が経験したことのないことをやり、コントロールできない状況下に置かれることによって、見たことのない表情が引き出されることになるのかな、と感じながら演じました。演技だけでいくら「大変だ!」という顔をしても、人の心をざわつかせるものにはならないと思うんです。監督はそこも、すべて計算されてるんだなと。
ウー:迫真の演技を引き出せたと思います。
──チャンさんとは英語でのセリフでしたね。
福山:これも大変でした。特にイントネーション。例えば、新幹線で聞く車内アナウンスでは「passengers going to the TOKAIDO」って、「トウ」にアクセントを置いて言うじゃないですか(笑)。
ウー:ははは(爆笑)。
福山:あの「トウカイドウ」は日本人が言う「東海道」とはまったく違いますよね。それと同じで、日本人という設定の僕の英語のイントネーションは、ネイティブと多少違っても許してもらえるかな?と思っていたんです。でも、「いや、そこはちゃんと正確なイントネーションにしてくれ」と。現場でネイティブの方にセリフを言ってもらいながら覚えました。