渡辺俊一(わたなべ・しゅんいち)/1965年、金沢市生まれ。金沢大学医学部卒業。同大附属病院第一外科、英国Royal Brompton病院を経て、2002年から国立がん研究センター中央病院に勤務(撮影/写真部・渡辺俊一)
渡辺俊一(わたなべ・しゅんいち)/1965年、金沢市生まれ。金沢大学医学部卒業。同大附属病院第一外科、英国Royal Brompton病院を経て、2002年から国立がん研究センター中央病院に勤務(撮影/写真部・渡辺俊一)
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 日夜、手術に向きあう外科の執刀医。がんとどう向きあっているのか。国立がん研究センター中央病院・呼吸器外科科長の渡辺俊一医師に聞いた。

 ここ半世紀以上、肺がん手術のスタンダードとされているのが「肺葉切除」だ。肺は右側が上中下、左側が上下と計五つの肺葉に分かれており、肺がんが見つかれば肺葉ごと切除するものとされてきた。

 しかし近年はCT検査が広く普及し、早期の肺がんもよく見つかる。肺葉よりも範囲が狭い「区域切除」で済むケースも増えてきた。肺がんを得意とする病院ではすでに手術全体の10~15%を区域切除で対応しており、特に国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)はその比率が約20%に達する

 同院の呼吸器外科科長・渡辺俊一医師(52)は年間約250件、過去15年間で通算約4300件もの肺悪性腫瘍手術を手がけてきた。

「今は多くのデータの蓄積があるので、こういうがんなら肺葉切除でなく区域切除でいいだろうという目安が大体わかってきました。肺は肝臓などと違って再生しない臓器なので、取れば取っただけ機能は落ちる。ですから残せるならできるだけ残したほうがいい。でも再発したら困るので、区域切除にするかどうかは慎重に判断します。

 術前は放射線診断医と相談し、手術中も病理診断医に“迅速診断”を依頼したり、病巣を顕微鏡で見たりして、なかには途中から肺葉切除に切り替える場合もあります。うちの病院は今のところ再発は相当少ないですね。肺の専門の病理診断医が3人もいるのも当院の強みです」

 小さく切るほうが手術は簡単かと思えるが、実際は逆だ。肺葉の分かれ目は見れば大体わかるが、区域は静脈で分かれており、表面から見てもわからない。血管を正しく見分け、余計なものを切らないようにしなければならないが、血管の枝分かれの仕方は一人ひとり全く異なる。

「だからCTをちゃんと撮るんです。手術がうまくいくかどうかは、術前のCTの情報が7割を占めている。今のCTは1ミリ間隔でスライスした細かい情報が取れますから、それを見てがんの部位や大きさ、血管の走行などをしっかりと頭に入れて手術に臨む。その下準備ができていればスムーズです」

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