母はそんな父をいつも支えていました。本当にタフだし、父の良いところもダメなところも全部引っくるめて受け入れていた母はすごいと思います。きっと、「私がいないとあの人はやっていけない」みたいな自信があったのだと思います。母は性格も前向きで、例えば商売がうまくいっていない時期も「大丈夫、どうにかなる!」と下を向かない。父はどちらかというとショボンとしてしまいますから(笑)。
このように、うちは家族それぞれの距離が今でも近い気がします。周りの人が私が親と接しているところを見ると、30代には見えないようです。それぐらい、私も家族には甘えているんでしょうね。すごく気持ちが安らぐ場所です。
面白い話がありまして、昔両親が私たちに「野良犬で自由だけど貧しい生活をするか、首輪が繋がった犬だけど毎日おいしいものを食べられるか。どっちがいい?」と聞いたそうです。次男は繋がれてもおいしいものが食べたいと言ったのに対して、私は野良犬がいいと答えたそうです。そして私は今、自由に世界を飛び回っている。何年経っても、性格は変わりません。(構成/西川結城)
※AERA 2018年1月29日号