たしかに公明党は、かつて参院大阪選挙区で80万票前後を維持していたが、近年は集票力を落とし、60万票を切っている。衆院小選挙区ではさらに厳しくなるが、そこに維新から追い打ちをかけられては、たまったものではない。

 3月9日に公明党が急きょ、次期衆院選で埼玉14区に石井啓一幹事長、愛知16区に伊藤渉政調会長代理を立てることを発表したのは、大阪で失うかもしれない議席数を大阪以外で確保しようとする意味があったのだろう。また次期衆院選から新設される東京28区には、高木陽介政調会長が立つといううわさもある。

 新28区はおおよそ練馬区の東半分を占めるが、4月23日に投開票された練馬区議選では公明党の公認候補4人が落選した。他にも大田区、目黒区、港区、杉並区の各区議選や兵庫県西宮市議選、高松市議選、大阪市議選、愛知県議選春日井市選挙区でも落とし、合計12人が落選したことになる。

 もともと「完勝」を標榜する公明党だが、それが統一地方選で実現したのは2007年までで、2011年は2人、2015年には4人、2019年には2人と落選者を出している。しかし2桁というのは前代未聞だ。

 2023年度予算が成立した3月28日、早期解散を懸念する山口那津男・公明党代表は、あいさつまわりにやってきた岸田首相に「解散じゃありませんね」と釘を刺したが、現状はこの時よりさらに悪化している。しかも維新が進出してくるとなると、目も当てられなくなるはずだ。ある永田町関係者は次のようにいぶかしがる。

岸田文雄首相と面談後の公明党の山口那津男代表=2023年4月25日
岸田文雄首相と面談後の公明党の山口那津男代表=2023年4月25日

「それが維新の戦略ではないか。公明党に圧力をかければ、公明党は岸田首相に解散時期を遅らせるように懇願するはずだ。そうなれば維新にとって、全国進出する準備のために時間を稼ぐことができる」

 もしそうなら、日本維新の会が政局をまわしていることになる。果たして維新の思惑通りにいくのか。岸田首相は維新の野望を阻むことができるのか。近いうちの解散を考えているからこそ、岸田首相の顔には苦悩がにじんでいるのではないだろうか。

(政治ジャーナリスト・安積明子)

■あづみ・あきこ 兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)。趣味は宝塚観劇。

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■あづみ・あきこ/兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)。趣味は宝塚観劇。

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