さらに札幌冬季アジア大会時、北朝鮮の張雄(チャンウン)IOC委員も、取材に対し「参加できない理由もしない理由もない。五輪憲章に従って、参加はできる」と五輪参加は匂わせていたが、昨夏の世界テコンドー選手権で韓国を訪れた時は、統一チームについて「実現には遅すぎる」と否定的だった。
警備が課題となる入国方法や宿泊場所はどうか。過去の大会では飛行機で来たが、李熙範(イヒボム)大会組織委員長は「陸路で入ってくるようにしたい」と表明。平昌郡がある江原道の崔文洵(チェムンスン)知事は昨年12月、北朝鮮関係者と中国で接触し、宿泊用クルーズ船の提供を申し出た。警護の問題も払拭というわけだ。
そして人々の耳目を集めそうなのは、あの応援団だ。
仁川アジア大会では「美女応援団」は現れず、北の選手が韓国で競技をすることへの慣れや、南北関係の膠着状態から、人々の関心は薄かった。だが登場した釜山アジア大会では韓国の人々の大会そのものへの注目度も高かった。今回はやって来るのだ。
韓国側はかねて、北側に五輪参加を促すメッセージを送り続けてきた。核・ミサイル開発などの問題で国際社会の制裁が強化される中、親近感を抱かせようとするなど、北朝鮮の外交的意図も多々感じさせる今回の五輪出場。この五輪は韓国国内の関心の低さが課題だったが、北の代表団派遣で関心が高まれば、関係改善を望む世論につながる可能性はある。(朝日新聞編集委員・中小路徹)
※AERA 2018年1月22日号