「生活保護を受給できなければ生きていけなかった。子どもの病気も治せたし、落ち着いて家族の今後の生活や自分のキャリアについて考えられたのも助かりました。生活保護には感謝の気持ちしかありません。貧困の連鎖を断ち切るのが政治の役割なはず。まずは生活保護以下の水準で生活している約3千万人を支援することが大切。母子家庭を狙い撃ちするような今回の削減案には反対です」(村上さん)
しかし、昨年の北九州市議選に立候補するまで生活保護を受給していたことは10年以上、夫以外に誰にも話していなかったという。「生活保護なんて恥ずかしい」という自己責任論に絡めとられていたからだ。だが、北九州市で男性が「おにぎりを食べたい」と書き残して餓死した事件など、行政の「水際作戦」が明るみに出た。生活保護受給者へのバッシングが高まる中、経験者が声をあげ、生活保護は国民の権利だと伝えることが大切だと今は思い直したという。自身が周囲から孤立した体験から、生活保護受給者もルームシェアできるような制度改革が必要だと考えている。
前出の院内集会に参加した立憲民主党の池田真紀衆院議員もシングルマザーとして生活保護を受給していた経験がある。当時から福祉事務所の対応や制度の運用実態に疑問を感じていたという。
「今回の基準引き下げ問題について、厚労省の説明で本当に納得のいくものは一つもなかった。国民がただ生きるだけではなくて、安心と笑顔を勝ち取らなければいけないと思っています」(池田さん)
引き下げを検討した厚労省の生活保護基準部会は、客観的な数字にこだわり、最後まで当事者の声を聞かなかったという。来年1月召集の通常国会で国の予算案審議が始まる。彼女たちのような体験者の切実な声が、議論に反映されるよう願っている。(AERA編集部・竹下郁子)