ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。
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先日まで行っていたアメリカ合宿。夏のニュージーランド合宿よりも、さらに本番に近い滑りを意識したトレーニングの日々でした。今の自分のコンディションや、板などマテリアルの現状などを確認しながら、しっかりタイムも計測する。すべての要素において、平昌五輪で最高の結果を残すための作業を徐々に行ってきました。
コロラド州のカッパーマウンテンは最高の練習環境でした。以前、アメリカ合宿に向けて、この夏に山の関係者が日本に来た時に「おもてなし」をしたという話をしましたね。あれが奏功したのか、現地でもコース選びや日程調整など、希望を受け入れてくれたことで充実したトレーニングができました。一緒にいた日本人向けツアー代理店「スキーアメリカ」の方も希望のコースで滑ることができたみたいで、丁寧におもてなしをして良かったなと思います。
素晴らしいコースを連日滑ってみて、あらためてスキー先進国の現実を知ることもできました。アメリカ代表のトップレベルの選手たちは、こういう環境で練習している。そんなことを噛み締めました。「こんなの、みんな強くて当たり前でしょ!」って。アメリカはアルペン競技が相当盛んです。さらにスキー連盟は単独組織としてビジネスが成り立っていて、国の助成金を一切受けることなく運営できています。実際にアメリカで事業展開をしている日本企業が今季からスポンサーについたほどです。まだまだ日本ではマイナースポーツの枠を出ない私たちの競技ですが、世界規模では大きなお金が動いていることも事実なのです。
人気コースでのトレーニング。実は合宿終盤にはノルウェーやスウェーデン、イタリアなどのトップチームが集まってきて、予約が難しい状況になったのです。そこで、私は現地でも「おもてなし」作戦に出ました。初めはカフェでコーヒーを買ってスキー場の事務所に差し入れし、さらに2日目はコーヒーのサイズを大きくして、3日目にはケーキもつけて。コースの予約リストが夕方5時ぐらいに出来上がるので、3時には差し入れして希望を伝えて。効果はもちろんバッチリでした! 知人に「混んできたのにコースを使えて。日本でのおもてなしのおかげだね」と言われたので、「昨日も差し入れ持ってコースの交渉してきましたよ!」としっかり返しておきました(笑)。(構成/西川結城)
※AERA 2017年12月11日号