「教授には専門知識はあるが、社会的なコミュニケーションは、地域の人が持つ力にはかなわない。学生が地域に出れば、ぐんぐん成長するのではないか」(同)
現場で問題を知り、考え、提案する。2002年、まだその言葉がなかった時代に打ち出した指針は、「アクティブラーニング」そのものだった。
「うちのような小規模な大学だから、また地元愛の深い松本市だったからこそ、可能だったことだとも思います」(同)
今後、さらに少子化が進んで多くの大学が定員割れを起こし、いわゆる弱小私大は淘汰(とうた)されるといわれる。『消えゆく「限界大学」』(白水社)の著者で、教育研究者の小川洋さんは、「松本大学は稀有(けう)な成功例のひとつ」だという。
「地元にいれば、過疎化や高齢化など、都市部では見えづらいリアルな現実が見えてくる。地域の問題に現実的に取り組める人材を育てようとかじを切ったところが成功しています。たとえば、共愛学園前橋国際大学(前橋市)は、教職員は地元に居住することを条件にしている。地域に根差すかどうかが、生き残りの条件になってくるのでは」
地域や企業側も大学に注目している。北海学園大学(札幌市)はUR都市機構と連携し、団地の課題調査や再生を授業に取り入れている。同大工学部建築学科の岡本浩一教授は、「座学で建築を学んだ学生にとって、実際の入居者との直接の交流は、実態を理解する貴重な経験になりうる」という。入居者調査を行った4年生の男子学生(21)は、「自分だけで凝り固まらず、視野が広がった。社会に出る上で、いい経験になった」と語る。(編集部・熊澤志保)
※AERA 2017年11月27日号より抜粋