大統領になる条件として資質が重んじられてきた米国で、品位のない感情丸出しの一方的なツイートや発言を連発するトランプ氏は、極めて異色な存在だ。自身に反対する人物や団体を名指しし、粘っこく攻撃する姿勢が特に問題視されており、これが逆に白人至上主義や人種差別主義といった、これまで目立たない形で活動してきた過激思想の団体に声を上げさせやすい環境をつくっていると批判されている。
通常は現職大統領についてのコメントは避ける慣習がある大統領経験者たちも、とうとう口を開いた。10月19日、それぞれ別のスピーチで、ブッシュ(子)、オバマ両氏が暗にトランプ氏への懸念を表明した。
「偏狭さが勢いを増している。我々を団結させようとする勢力よりも、分裂させようとする勢力のほうが強くなっているように見える」(ブッシュ氏)
「故意に人々を怒らせ、異なる意見を持つ人間を悪者扱いする人たちがいる」(オバマ氏)
今月5日からの初訪日で、安倍晋三首相との蜜月関係を最大限に強調したトランプ氏だったが、訪日直前の3日には訪問先のハワイで「リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)」とツイート。おおよそポリティカル・コレクトネス(政治的に正しい言葉遣い)を考慮しない「自由な発言」があちこちで起こる。これを抑制するだけで米国内の分断も少しは緩和されると多くが考えている。