今のG7でただ2人、在職期間が5年を超えるリーダーがいる。日独の首相だ。その2人が同時期に迎えた勝負の総選挙。築いてきた安定政権が、ともに新興勢力の台頭に直面した。激変する国際情勢の中、両国の行方に注目が集まる。
東西冷戦時代、西側諸国によって発足した主要国首脳会議(G7)で現在、最も安定した政権を誇る2人のリーダー。一人は11月で在職12年となるドイツのアンゲラ・メルケル首相であり、もう一人は12月で在職6年(1年で辞職した第1次政権を含む)となる日本の安倍晋三首相だ。ともに1954年生まれの63歳で、誕生日も2カ月しか違わない。メルケル氏は2005年にドイツ歴代最年少で、安倍氏は翌06年に日本戦後最年少で、首相の座を手にした。
敗戦から始まった両国の戦後の歴史同様、共通点も多い2人が、今後も安定政権を維持できるかを占う勝負の総選挙に今秋、直面した。ともに有利な選挙戦になると思われたが、甘くはなかった。想定外は、国政選挙で議席を得たことがない新興勢力の台頭だ。
日本に先駆けて、9月24日に投開票されたドイツ総選挙(連邦議会選挙)では、メルケル氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第1党となったものの、前回選挙から60議席以上も減らして、過半数には大きく届かなかった。
同盟と連立を組んでいた社会民主党(SPD)に投票したサンドラ・ルオンさん(41)は、「そろそろメルケルから解放される時だと思った」。夫がベトナム人で、多様性を重んじる価値観を共有するが、「私たちはメルケルが反移民だった過去を知っている。親原発の方針も突然、反原発に変えるなど信念がない。長期政権は『安定』と言う人もいるが、私には『独裁』に見える。彼女は信頼できない」と話す。
しかし、そのSPDも40議席を失い大きく後退。さらに連立を解消して野党第1党に回る方針を表明し、メルケル氏は別の連立相手を探さなくては、4期目の政権を発足できなくなった。