羽生結弦(22)の五輪シーズン初戦は波乱に満ちていた。ショートでは世界最高得点。フリーでは大きく崩れて、総合2位。何が起きたのか。来年2月の平昌五輪で、連覇はできるのか。
フィギュアスケートの五輪シーズンがついに幕を開けた。
誰もが羽生結弦の「五輪連覇」を期待しているのだろう。シーズン初戦、まだ9月で、五輪の選考に直結しないテスト大会だというのに、カナダ・モントリオールで開かれたオータム・クラシックの会場は、世界中から集まった羽生ファンで埋め尽くされていた。
●集中力の持っていき方
会場の入り口に横づけされた何台ものツアーバス。席取りのために前夜からファンが並んだために地元警察が出動し、客席ではクマの着ぐるみで応援する黄色い集団が中国語でエールを送る。ファンの興奮と五輪シーズンを迎える選手たちの緊張とが混ざり合い、独特の空気が漂っていた。
そんな中で行われたショートプログラム。羽生の演技は圧巻だった。
2本の4回転を含むすべてのジャンプを美しく決めて112.72。世界最高得点を更新したことがコールされると小さな会場はドッと沸き、歓声で壁がミシミシと震えた。
得点を確認した直後の羽生は、こう話した。
「112点と聞いて『そんなに出るんだ?』と思いましたが、(直前に)ハビエル・フェルナンデスが101点を取った段階で、『自分のベストは110だ』と頭の中で思っていました」
羽生がショートで110.95点の自己ベストを出したのは、2シーズン前。2015年のグランプリファイナルだった。
「あの時は4回転ジャンプが二つとも前半なので、自分の中ではいまとは全然違うレベルだと思っています。なので、いい演技ができれば点数もおのずと出るなと思っていました。まだ初戦ですし、この点をベースに戦っていきたいです」(羽生)
ところが、翌日のフリースケーティングでは、まるで別人。冒頭のルッツが1回転になり、演技後半に予定していた4回転トウループは2本とも2回転に。もう一度跳んだ予定外の4回転トウループでも、着氷が乱れた。