99年、同社が手掛けた菓子のおまけ、「食玩」が爆発的な人気を呼び、フィギュアが一般に認知されだしたが、あくまで数百円の廉価なものが主流だった。

 現在、数千円以上するアニメや特撮ヒーローもののフィギュアも数多く販売されているが、販売も人気も限定的で、広く市民権を得ている米国には遠く及ばないという。

「クオリティーは世界最高水準なのに、日本はフィギュアに冷淡で、飾る文化が浸透していない。日本では、1万5千体も売れれば大ヒットですが、米国ではアメコミや映画だけでなく、野球やアメフトなどのスポーツ選手までフィギュア化され、ヒット作は30万~50万体も売れるのです」(同)

 宮脇さんは、そんなシビアな日本の市場を拡大すべく、奮闘してきた。確かな手応えもある。

●阿修羅像が時代変えた

 09年、「興福寺創建1300年記念 国宝 阿修羅展」の会場では、同社制作の「阿修羅像」(2980円)が限定発売され、即完売した。今年2月には、12万円超のハイグレード版阿修羅像を発売している。双方の原型師を務めたのは、造形作家、木下隆志さんだ。

 14年には、フィギュア造形作家の竹谷隆之さんとコラボし、日本の伝統工芸「自在置物」を模した可動式の「タケヤ式自在置物」シリーズをスタート。こちらも話題を呼び、麒麟や龍のほか、不動明王、風神、雷神などがラインアップに加わる。

 カプセルトイでは、今年10月、伊藤若冲の「若冲の花」シリーズをリリース予定だ。

「フィギュアは森羅万象を表現でき、見せるものは星の数ほどあります。いいものを作って商売が成り立つのが理想ですが、まずは裾野を広げ、皆さまに知っていただきたい」(同)

 ハイグレードな日本のフィギュアは、さらに大きく羽ばたく日を待っている。(編集部・澤志保)

AERA 2017年9月11日号