壮大なプロジェクションマッピングが映し出された天井と、観客でいっぱいになったオールスタンディングのフロア。中央に巨大なランニングマシンが現れ、鎧に身を包んだサムライが爆風の中を走る、走る。かと思えば、重い太鼓の音と共に宙づり状態で観客の頭上を舞う男女。物体が白い壁のようなものにぶち当たり、白い花吹雪となってあたり一面に。正面では、水が流れる壁を男女が垂直に歩き、天井からは巨大な透明のプールが下りてきた。
舞台はステージだけではない。頭上や壁など360度の全方向型だ。観客はあちこちで起こる出来事を全身で否応なく“体感”する。そんな奇想天外の演出で観客の度肝を抜くダイナミックなショーが、「フエルサ ブルータ WA!」だ。東京・品川プリンスホテルステラボールで、12月10日まで上演されている。
●ラテンと和が融合する
「フエルサ ブルータ」とは、スペイン語で「獣のような力」という意味。2002年、アルゼンチン・ブエノスアイレスで芸術監督ディキ・ジェイムズらによって結成されたカンパニーで、05年から同名のショーが開幕。ニューヨークやロンドン、東京など60都市でロングランし、500万人以上を熱狂させてきた。
前身となったのは、クラブ的空間で観客の頭上に水をふんだんにまき散らすショー「ビーシャ・ビーシャ」によって世界を席巻したカンパニー「デ・ラ・グアルダ」だ。実はこのショーを03年にソウルと東京で観た。頭上からヘリコプターの小さなおもちゃが山ほど降ってくるなど、おもちゃ箱をひっくり返したような空間。次は何が起きるか、楽しみでしょうがなかった。
●日本人パフォーマーも
そんな彼らが今回新たに挑んだのが、ラテンと和の融合だ。
構想を始めたのは09年。ジェイムズは何度も来日し、京都御所や平安神宮、伏見稲荷、東大寺など神社仏閣を巡ったという。制作プロデューサーの辰巳清は当時をこう振り返る。