「彼は特に天皇制と日本神道、鎌倉期の仏像や戦国時代の歴史を驚くほど詳しく調べていた」
舞台美術には、能面やねぶたを思わせる巨大装飾をちりばめ、日本の祭りや伝統を意識した演出。今回は日本人パフォーマーも多く起用するため、16年12月、東京のスタジオで3日間、オーディションを実施した。
「驚くほど身体能力の優れた日本人が大勢集まってくれた」
と、ジェイムズ。2月中旬から約1カ月間、灼熱のブエノスアイレスでリハーサルがあった。
参加した元男子新体操選手の祝陽平は、青森山田高校でキャプテンとしてインターハイで団体優勝。卒業後はパフォーマンス集団「白A」に加わり、プロのパフォーマーとして世界で活躍してきた。公演では、ランニングマシンを走ったり壁を歩いたりと、持ち前の身体能力を十二分に生かしている。祝は「世界中から注目されるショーだからこそ、そのプレッシャーを跳ね返し、圧巻のショーを創りたい」と意気込みを語っていた。
これまでのショービジネスは、ブロードウェーやラスベガスで認められてこそ成功というのが定石。だが本作は、日本発ワールドツアーの布石ともいえる意欲作だ。可能性を秘めた挑戦的なショーが始まった。
(ライター・西元まり)
※AERA 2017年9月11日号