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 思想家・武道家の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、哲学的視点からアプローチします。

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『街場の天皇論』という本がもうすぐ上梓される。直接のきっかけは昨夏の陛下の「おことば」である。私は「おことば」を、「立憲デモクラシーと天皇制の共生はどうあるべきか」についての陛下の長年の思索と実践の果実として重く受け止めた。国民の多くも深い共感をもって「おことば」を受け入れたと思う。けれども、政権周辺の反応はずいぶん冷たかった。これは国政への関与であり憲法違反だと言う人までいた。

「立憲デモクラシーと天皇制はどう共生できるのか」は戦後日本が引き受けねばならなかった国民的難問である。だが、天皇は日本国と日本国民統合の「象徴」であること、法律の公布、国会の召集、大使公使の接受などの国事行為のみを行い、「国政に関する権能を有しない」と憲法に定めて、それ以上考察を深める努力を私たちは怠ってきた。私は憲法尊重擁護義務の順守において陛下は全公務員の範だと思ってきたので、この批判には一驚を喫した。

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