ナルシストで自信家の玉壺とは対極的で、鋼鐵塚は決して自分の才に満足していなかった。鬼との戦いで刃こぼれするような刀を作ってしまった自分を反省し、短期間でムキムキになるほどに修行を重ね、鬼の攻撃にも懸命に耐える。

 彼は、この段階では「最高の日輪刀」を一から作り上げることはできなかったが、「日の呼吸の使い手のための日輪刀」を甦らせることだけにすべての力を尽くしたいと願う。自らの力不足も、悔しさにも耐え、「鬼を滅殺するための刀」を継承するために刀を研ぎ続けるのだ。

 天才と自称し、か弱い子どもを見下してきた玉壺は、戦いのなかで、自分の才が虚構だったという現実を突き付けられる。その現実を知らしめるのは、“毒舌”の少年たちと、日々の研鑽を惜しまずに働く刀鍛冶だ。そんな彼らの勇姿をこれからも見届けたい。

◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。AERAdot.の連載をまとめた「鬼滅夜話」(扶桑社)が好評発売中。

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