●地域との接点はうすく
達夫さんは神戸市消防局西消防署長まで務め、退職後も消防団や地域活動の世話焼きに熱心だった。事件2週間前の日曜日も、道路に伸び出した草刈りを地域の人たちと一緒にしていたという。幼なじみでもある村田昌弘さん(73)はこう語る。
「達夫さんのお父さんも役場の幹部をしていた名士で、男女合わせて5人ぐらいきょうだいがいて、うちひとりの弟も消防局に勤務してました。達夫さんとは頻繁に顔合わせてようしゃべる間柄やけど、孫が一緒に住んでるなんて聞いたこともなかったから余計驚いてますわ」
竹島容疑者は地元の小、中学校を卒業後、5年制の神戸市立工業高等専門学校に進学して中退。同市内の専門学校に入り直してコンピュータープログラミングを学んでいたという。再逮捕直後は調べに対し黙秘をしていたが、その後は学業や仕事がうまくいかず、約半年前に仕事を辞めたことなど悩みを漏らすようになったという。近所でもほとんど存在を知られていない竹島容疑者は、神戸市の登録有形文化財に指定されている茅葺き屋根の古民家に引きこもってルサンチマンを募らせていたのだろうか。
日本犯罪学会の影山任佐(じんすけ)理事長はこう分析する。
「家族だけではなく、近隣の面識のない人も襲っていることから、現時点で考えられる動機は二つ。自殺したいが自分では死にきれず、大量殺人を起こすことで死刑になろうとする考え。もうひとつは他者を殺すことで自己の存在証明を得ようというものです」
知子さんは「思い当たるトラブルはない」と話した。竹島容疑者がSNSを使っていた痕跡も見当たらない。犯行にかりたてる“怒り”に火をつけた動機は何だったのか。
(編集部・大平誠、石臥薫子)
※AERA 2017年7月31日号