3月末に岸田内閣が打ち出した「異次元の少子化対策」の試案には、親の働き方に関わらず利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設が盛り込まれた。今年度から、定員に空きのある保育園で週に1~2日ほど、子どもを預かるモデル事業を始めるという。すでに保護者の就労に関係なく利用できる「一時預かりの定期利用」を始めた保育園もある。宮城県仙台市にある「おうち保育園かしわぎ」もその一つだ。一時預かりとはどのような仕組みなのか、利用者の声を聞いた。
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「おうち保育園かしわぎ」で一時預かりを利用する須藤絵美さんは夫の転勤で昨年4月、岩手県盛岡市から仙台市に移り住んだ。
「引っ越してきたとき、上の子がイヤイヤ期で、下の子は0歳だったので本当に手がかかった。私1人じゃもう全然手が回らなくて、イライラした。子どもに当たったりとか、ほんと、最悪でした」
最初は保育園に入れることを考えた。
「そうすると、本末転倒ですけれど、子どもを保育園に入れるために働かなければならない。ちょっと入園はきついかな、と思いました。なんとか1人だけでも預かってもらえたら、頑張れるかなっていう感じで、『一時預かり』の利用を考えました」
そこで須藤さんは「おうち保育園かしわぎ」の一時預かりを見つけ、週3日の利用から始めた。
「保育園と連絡帳でやり取りをするんですが、私があまりにもたくさん愚痴を書いていたら、保育園の方から、『毎日でもいいですよ』って言っていただいて。今はほぼ毎日使わせていただいています。本当に楽になりました」と、晴れやかな表情で語った。
■問題は「補助金がほぼない」
山本千尋(ちひろ)園長によると、親たちが「一時預かり」を利用する理由は多岐にわたるという。
「通院時に子どもを連れていくと大変だ、上の子が通っている幼稚園のPTAに参加するとき下の子を連れていくと疲れる、第2子を切迫早産で急きょ入院した、フリーランスだとどうしても家庭状況の点数が低くなって認可保育園に入れられないなど、本当に理由はさまざまです」