最近、待機児童が解消しつつあり、保育園に空きができるようになった。それを利用するかたちで「こども誰でも通園制度」が創設されるわけだが、その流れは池本研究員の目にあまりにも場当たり的に映る。
「例えば、イギリスでは親が働いているから保育園に通えるのではなくて、むしろ親が失業している子どもほど保育園が必要と考えられている。子どもを保育園で見てあげて、親が職業訓練を受けて、仕事につけるように、サポートしている。ところが、日本では、親がリストラされたら、子どもは保育園を出てください、となっちゃう。そんな制度でいいのか、と思うわけですよ」
■保育を受ける権利は
池本研究員によると、日本の保育制度は先進国のなかでは圧倒的に遅れているという。
戦後、女性の社会進出が進むと、欧州を中心に少子化が大きな問題となった。
社会に進出する女性を支えるため、各国は仕事と子育ての両立を図れるように保育所を整備した。その際に重視されたのが「子どもの権利」である。1989年には国連で「児童の権利条約」が採択された。
「全ての子どもに適切な環境が保障されるべきだとして、海外では保育制度が見直されてきました。保育の質の評価機関の設置や、保育者採用時の犯罪歴チェックの義務化、幼保一元化など、日本にはない制度が山ほどあります」
さらに、日本は保育について十分な予算をつけてこなかった。
「保育士が集まらないのは、賃金が低すぎるのと、1人で見る子どもの数が多すぎるからなんですね。子どもには教育を受ける権利があるのと同様に、保育を受ける権利があり、それに必要な費用は公的にみていく、というのが世界の流れです。なので、乳幼児教育について専門的な知識と経験を持つ保育士は、学校の教員と同等の賃金を得ている国が多いのです。日本みたいに、乳幼児期の子どもは親が面倒を見るのが基本で、それができない場合に手当てする、という発想では全然ないわけです」