翁長雄志知事が公聴会証言を受け、「辺野古新基地建設も拙速に進めるのはいかがなものか」と、すかさず横槍を入れたのも理にかなっている。
東アジアの安全保障環境の変化をめぐっては、2014年にもジョセフ・ナイ元米国防次官補が、中国のミサイル技術の発達を念頭に「沖縄の米軍基地の脆弱性を考える必要が出てきた」と指摘。沖縄の過度な基地集中に警鐘を鳴らした。
実際、米軍再編では沖縄駐留米軍の約7割を占める米海兵隊が司令部と2千人規模の海兵遠征部隊(MEU)に削減される。日本政府が米海兵隊の沖縄駐留の理由として繰り返す沖縄の「地理的優位性」や「抑止力」の論拠の薄弱さが虚しく響くばかりだ。
ネラー総司令官は公聴会で米海兵隊部隊のグアム移転について、「日本政府との合意という政治的な理由のため」とも付言した。沖縄からの移転が「政治的理由」で決められている現実に不満をにじませたようにも受け止められるが、図らずも沖縄に米軍基地が集中し続けている本質的理由もまた、「政治的理由」であることを言い当てている。
こんな事例もある。普天間飛行場の移設をめぐり、橋本龍太郎内閣の官房長官として沖縄との交渉を担った故・梶山静六氏の書簡が5月31日以降、沖縄県公文書館で公開されている。日本本土での反対運動を理由に、名護市への移設以外にないと記しており、ここからも「政治的な理由」で県内移設を進めた政府の姿勢が浮かび上がる。普天間返還の日米合意を果たした橋本首相は当時、基地移設を「地元の頭越しには進めない」と強調したが、そうした配慮は現政権には見る影もない。
しかし、この普天間・辺野古をめぐる問題の根本的な矛盾を問う声は、沖縄以外ではほとんど聞かれなくなった。政府の強硬姿勢は全国世論の「暗黙の了解」が後押ししているのが実情だ。内閣府調査で国民の約8割が「日米安保条約」を肯定評価する中、辺野古新基地建設は「日米同盟強化」のため、という政府の説明に安堵感を覚える国民も少なくないのが現実ではないか。
●沖縄人の本音に戸惑い 全ヤマトンチューへの問い
そうした中、沖縄に偏重して押しつけてきた「安保の負担」と主体的に向き合おうとする「本土」側の胎動が具現化しつつある。