沖縄では近年、基地が経済発展の妨げになっているとの認識が着実に浸透している。沖縄県はホームページで、基地経済への依存度は5%台にすぎないことを説明したうえで、こう明示している。
「米軍基地の返還が進展すれば、効果的な跡地利用による経済発展により、基地経済への依存度はさらに低下するものと考えています」
政府は沖縄に米軍基地を集中させておくほうが政治的・軍事的に「安上がり」だと考えてきたのが実情だろう。しかしそれは、持続可能な安全保障政策を図るうえで今なお有効な、合理性のある判断といえるだろうか。
米ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授(日米関係論)は6月4日付「琉球新報」のインタビュー記事でこう唱えている。
「朝鮮半島が有事になった場合、沖縄では遠すぎる。海兵隊の輸送揚陸艦は佐世保基地(長崎県)に、戦闘機や給油機の部隊は岩国基地(山口県)にある。九州で、米軍と自衛隊が共同使用できる場所を陸上に造ることが一番合理的だと思う」
●平和行政の巨星墜つ 本土の非人間的生き方
6月12日。普天間返還合意時の沖縄県知事、大田昌秀氏の訃報が入った。大田氏が知事時代に平和行政の柱として、95年6月に糸満市摩文仁に建立した「平和の礎(いしじ)」には国籍を問わず、軍人・民間人を区別することなく、沖縄戦などの戦没者を刻銘している。共生を旨とし、他者の痛みを自らの痛みと感じる「沖縄の心」を体現する施設だ。
大田氏の著書『醜い日本人』(サイマル出版会、「新版」は岩波書店)の「あとがき」(新版)から一節を引用させていただく。
「沖縄に過重に基地を負担させたまま、いたずらに安保条約の重要性を強調するだけで、何人もみずからは条約に責任を負い基地を負担しようとはしない。そのことに県民は異議を唱えているだけだ。本土政府首脳が、他人の痛みを感じ取ることもできないどころか、他人を犠牲にして顧みない『非人間的』な生き方に首をかしげているのである」
戦後日本の自画像を直視したい。
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2017年6月26日