ネズミにとって「最適な住環境」だという築地市場は、猫にとっても同様だ。仮に野生の猫を放したとしても、おいしいエサが豊富でネズミなど見向きもしないに違いない(撮影/写真部・岸本絢)
ネズミにとって「最適な住環境」だという築地市場は、猫にとっても同様だ。仮に野生の猫を放したとしても、おいしいエサが豊富でネズミなど見向きもしないに違いない(撮影/写真部・岸本絢)
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 豊洲移転が先延ばしになって、はや7カ月余。東京都中央卸売市場築地市場は相変わらず活気にあふれ、国内外の観光客でごった返す。

 実は昨年11月の閉場・移転に向けて、築地市場に生息するネズミの掃討作戦が計画されていた。東京都の担当者が明かす。

「取り壊す施設の周辺にかごわなを仕掛けて、逃げ出すネズミを捕らえようというのが主な作戦でした」

 しかし、築地一帯にどれだけのネズミが生息しているかについては、都、場外を担当する中央区保健所、ネズミ駆除の専門家がこう口をそろえる。

「母数がどれだけいるのか見当もつかない」

●粘着シート8万3千枚

 築地市場は人もネズミも出入り自由の開放型施設のため、生息域が場内と場外で明確に分かれているかどうかも不明だ。同区では例年、築地場外を中心にマンホールにわなを仕掛けるなどの方法で年間300匹程度を捕獲しているという。

 昨年11月に予定されていた移転に際しては、場外にネズミが大量に流出することを見越して駆除対策を立て、飲食店や家庭用に配布するため捕獲用の粘着シート8万3千枚や、植え込みなどに仕掛けるプラスチック製捕獲ボックスなどを用意していた。しかし、同8月末に移転方針が凍結になり、場内外での対策も宙に浮いた格好だ。

 ネズミによる被害で最も恐ろしいのは感染症だ。かまれたり触ったりすることで直接感染するだけでなく、ネズミの糞尿が飲み水や食品を汚染して口から病原体が取り込まれる危険性もある。近年は被害報告はほとんどないが、急性熱性疾患や、腎症候性出血熱などを発症する恐れがあるという。

 日本国内には18種類のネズミが生息しているとされ、このうち都市部で問題を引き起こすのは、ビルの内部や高所、天井裏などに生息する体長15~20センチほどのクマネズミと、下水管や植え込みなどに生息する体長22~26センチほどのドブネズミ。築地市場内外に生息しているのは専らドブネズミである。

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