大阪府咲洲庁舎展望台から望む大阪市此花区の埋め立て地「夢洲」(写真中央)。カジノを含む統合型リゾート施設だけでなく、大阪が誘致に成功すれば2025年の万国博覧会の予定地にもなるという(撮影/編集部・大平誠)
大阪府咲洲庁舎展望台から望む大阪市此花区の埋め立て地「夢洲」(写真中央)。カジノを含む統合型リゾート施設だけでなく、大阪が誘致に成功すれば2025年の万国博覧会の予定地にもなるという(撮影/編集部・大平誠)
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 教育費無償化を公約に掲げて実行するなど成果を上げる一方で、厳しい管理で教育現場の疲弊を招いた維新の「教育改革」とは──。

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 大阪府立高校で40年近く教鞭を執ってきた2人の男性ベテラン教員が、目の前にいた。一人は理科、もう一人は社会科。何千という教え子を、これまで世に送り出してきた。学力を伸ばすのはもちろんだが、個々の生徒が協力し合う中で、自身の才能や生きる道を探し出す手助けをすることが、教師の本分だと思ってきた。職員会議でも意見を出し、式典の在り方も生徒と一緒に考える。しかし、周りを見渡せばいつの間にかそんな発言すら憚られるような雰囲気が、職場を覆っていた。そしてこの春、大阪府教育委員会は定年を迎えた2人の再任用を拒否した。

 社会科教師であり3年生の担任だった岩谷智志さん(61)は2012年3月、東大阪市内の府立高校卒業式で君が代斉唱の際に着席、ほどなく戒告処分を受けた。大阪維新の会が主導して11年6月に施行された「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」がその根拠。公立校の教職員に君が代の起立斉唱を義務付けた全国で初めての通称「国旗国歌条例」のことだ。処分を受ける際、岩谷さんは府教委が用意した「反省文」に署名するよう求められた。条例に従わないようなことは「二度としません」と印字された部分に斜線を引き「自分の良心に従って行動します」と書き込んで提出した岩谷さんに、担当者は何も言わなかった。

 その後は3年生の担任を受け持たなかったこともあり、卒業式では会場外の仕事が割り当てられた岩谷さんが「踏み絵」を踏む機会はなかった。しかし定年退職を間近に控えた今年1月末、5年ぶりに「反省文」を突きつけられ、校長にこう迫られた。

「正しいモノに書き直しますか」

 断った岩谷さんに3週間後、校長はこう告げた。

「府教委はあなたの再任用を不合格としました」

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