2020年の東京五輪に向けて、新卒採用だけでなく、40代以上も含めた転職市場が活況だ。気になるのは転職後の年収のアップダウンだが、自己実現を優先しようと地方に移る人、お金に価値を置かない転職も増えている。AERA 5月22日号では「転職のリアル」を大特集。転職をまじめに考えている人、うっすら意識している人にも読んで欲しい。
人手不足を背景に30代後半~40代以上の転職市場が活況を呈している。だが、誰もが転職市場で生き残れるわけではない。30~40代で転職した20人の証言からコツを探った。
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小売業でIT事業を手掛ける男性(46)。前職でも同じ仕事をしていたが、会社が傾き、男性のいる事業部も縮小を余儀なくされた。進路に悩んでいた昨年、取引先の役員に声をかけられた。
「うちを助けてくれませんか」
40代で複数回の転職を経験しているが、その都度年収はアップしてきた。
「複数の内定をもらえれば、条件交渉ができますから」
自分の価値を高める方法は、転職後にすぐ、圧倒的な結果を出すことだという。入社2日目に新規事業立ち上げのために出張し、制度設計まで一気にやりきったこともある。
「転職のたびに人脈が広がり、プライベートも含めて付き合っています。仕事面でも大きく助けられていますね」
●年収アップは少数
かつては転職が難しいとされてきた30代後半~40代以上の転職市場が今、活気づいている。人材会社「エン・ジャパン」によれば、40代以上の新規登録者数は2014年上期から16年下期にかけて約3倍に、「45歳以上OK」という求人数も16年4月から今年3月にかけ1.5倍に増えた。即戦力人材向け転職サイト「ビズリーチ」では、転職が決定したうち4割が40代、50代だった。ビズリーチ取締役・キャリアカンパニー長の多田洋祐さんは活況の理由として(1)20~30代の人口が少なく、40代以降の団塊ジュニア世代が求められていること(2)産業構造の変化が激しくなり大手企業であっても新規事業立ち上げや維持発展などそれまでのビジネスモデルにはない状況に対応する必要が生まれ、自分たちにない経験を持った即戦力を求めていること、の2点を挙げる。