「大人は汚い!とか思ってたけど、距離が近くないと反抗もできないし」
AERA 2017年5月15日号で表紙に登場したのは、4月のアジア選手権女子シングルスで、日本勢として21年ぶりにアジア女王となった卓球選手の平野美宇。まもなく開幕する世界卓球で金メダルを狙う17歳は、超カワ天然系。思春期も中国コンプレックスもなんのその。「俯瞰する力」がハンパない。
中国で行われたアジア選手権女子シングルス準々決勝で、リオ五輪金メダリストで世界ランキング1位の丁寧を0-2から大逆転。万歳してジャンプしたあと「こ、腰が抜けた~」と倒れ込んだが、準決勝、決勝でも中国
選手を破り、日本勢として21年ぶりの優勝を果たした。
飛躍のきっかけは、昨年の中国スーパーリーグ参戦。
「どうしても中国選手とやるってなると、ワーッてなる。でも、中国人だって緊張するし、同じ人間なんだってわかったのが大きかった」
20~22歳の中国代表らが所属するチームに加入。団体戦などをともに戦った。2-2になってから登場した5番手選手が、顔をこわばらせてミスを連発するのを見た。試合や練習以外の時間には中国語を教わった。やがて、日本選手の多くが悩み続けた「チャイナ・コンプレックス」を軽やかに飛び越えた。
「最初はきつかったけど、いい経験でした」
と、リオ五輪の補欠も発奮材料にした。苦難はバネに、勝利は自信に。貪欲なティーンエージャーだけに消化する力がハンパない。
12歳で親元を離れ上京。親とは「反抗するほど一緒にいなかった」が、中国人の女性コーチには毒を吐いた。アドバイスにも「もう、わかってるよ!」。
「中2病っていうか。大人は汚い!とか思ってた(笑)。でも、距離が近い人じゃないと反抗とかできませんよね? 吐き出してたんだな~って。ま、まだ子どもですけど、高校からは落ち着いたなって自分でも思う」
ちゃんと栄養管理ができるようにと母親から教わったみそ汁や弁当の作り方は、
「もう忘れちゃいました」
へへへと笑ってから、
「でも、親には感謝しています」
とぽつり。オトナとコドモの中間地点で揺れながら、世界の頂点へと確実に上っている。(ライター・島沢優子)
※AERA 2017年5月22日号