「ひきこもり=不登校」のイメージがあるが、これらの調査結果からはひきこもりの高齢化が浮き彫りになった形だ。

 ひきこもり問題に25年間関わってきた、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんが言う。

「“いずれ働き始めるはず”“何とかなるだろう”と楽観視している親が多いが、相談を受けているケースでは、親が亡くなる人も出てきた」(畠中さん)

 大学卒業後、就職できずに10年以上ひきこもっている35歳の長男をもつ鈴木浩一さん(仮名)は、定年間近の59歳。年収580万円で、妻(57)はパートで96万円の収入がある。ローンを払い終えた持ち家に住み、預貯金800万円があるほか、退職金も1千万円ほどもらえる予定だ。鈴木さんは長男の国民年金保険料を払い続けているので、このまま払っていけば長男は年金を満額もらえる。

 長男が一生働けなくても何とか暮らしていけるように思えるが、「働けない子どものお金を考える会」に所属する、ファイナンシャルプランナーの村井英一さんは「貯蓄が底をつくリスクをはらんでいる」と指摘する。

 日本人の平均寿命を参考にして、鈴木さんが80歳、妻が85歳で亡くなった場合、長男は63歳で1人暮らしになる。持ち家と預貯金を相続し、国民年金も満額受給できるが、生活費を年間125万円に抑えたとしても、村井さんの試算では貯蓄は78歳で底をつくという。年金の受給額は年78万円と少なく、自宅改修費や固定資産税なども響く。

●相続でもめる可能性

 さらなる障壁は、きょうだいの存在だという。「親の労力や資産はひきこもりの子どもに注がれることが多く、きょうだいから不満が漏れることもある」と村井さんは注意を促す。親が「死後は家も預貯金もひきこもりの子にあげよう」と思っていても、相続時にきょうだいが遺留分を請求するケースもあり、ひきこもりの子に思ったほど財産がわたらないことがあるからだ。鈴木さんも資産をすべて長男に譲るつもりだが、鈴木さんの死亡時、さらに妻の死亡時に、それぞれ長女が自分の相続分を主張して遺産分割(合計1250万円)すると、貯蓄は63歳でマイナスに転じてしまう。頼りの存在に思えるきょうだいだが、リスクになるケースは意外に多いという。

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