貯蓄が底をつかないようにするためには、「親が元気なうちに、ひきこもりの子のライフプラン、マネープランを家族で話し合うことは重要」(村井さん)だという。

 また、村井さんは「親はひきこもりの子の国民年金保険料を払うだけでなく、少しでも収入を得る道を探ると、貯蓄が底をつくリスクを軽減できる」と助言する。田中さんの息子のように、月5万円でも収入があれば年収60万円、10年で600万円になる。36歳から59歳まで年収60万円の収入を得て、半分を生活費に、半分を貯蓄とした場合、97歳まで貯蓄は底をつかないという。

 ひきこもりの就業を支援する団体は全国に点在している。たとえば、「若者と家族のライフプランを考える会」(京都市)では、ファイナンシャルプランナーや臨床心理士、就労コーディネーターなどと連携してひきこもりの就労や社会参加を支援する。ビジネスマナー研修やグループワーク体験、市内の企業と連携した体験就労などへの紹介も行う。同会のキャリア相談には年間のべ100人が参加しており、40代、50代の参加者もいるという。

「ライフプランを立ててみて“月数万円稼げば生活できる”と分かると、安心して踏み出せる人もいます」と代表の河田桂子さんは話す。

●役所に行く練習も

 とはいえ、重度のひきこもりの中には、公共料金の引き落とし手続きすらできない人もいる。こうしたケースでは、親が元気なうちに、公共料金の契約をひきこもりの子ども名義に変え、料金の引き落としを子どもの口座に変えておくなど、段階を踏んで少しずつ準備をする必要がある。

「将来ひとりになったら健康保険などの手続きにも自分で行くことになるので、一緒に電車やバスで役所に行き、役所内の食堂や喫茶でランチやお茶をするのが第一歩。これを繰り返すと役所までの行き方を覚え、出かける精神的なハードルが下がる」(畠中さん)

 慣れてきたら窓口で必要書類をもらったり話をさせたりする。こうした手順を踏むことで、少しずつサバイバルへの道がつながる。畠中さんは子どもが働けないことを前提に、まずは持っている資産で生き延びる術を講じるほうが現実的という。

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