国民病ともいえるアレルギーの専門医がここまで少ない理由を、ある専門医は「手間が多くて儲からないから」と言う。患者の生活習慣をじっくり聞きだす問診をしたり何度も注射を打ち続けたりと、手間は多いが報酬は安い施術が多いのだ。
体調不良の原因が実はアレルギーだった、というケースは数多い。例えば明け方にせきがひどく続く「せきぜんそく」はダニなどが原因のことが多い。永田さんはトリコフィトン(白癬菌、いわゆる水虫)によるアレルギーの多さも指摘する。
「介護士や看護職などで体調不良を訴える人をよく調べると、トリコフィトンのアレルギーということがあります」
食物アレルギーを見ても、重大なアナフィラキシーショックを起こす小麦や牛乳以外に様々なアレルゲンが知られるようになった。例えば納豆アレルギー。食べて半日たって症状が出てくる「遅発性」のアレルギーだが、ある調査では患者の8割がマリンスポーツ歴があるという特徴があり、クラゲに刺されることで発症するという仮説が提唱されている。
「アレルギーは目や鼻、気管支、皮膚など体の様々な部位に症状が出るため、日本だと別々の診療科にかかって同じような薬をもらってしまうケースもある。すべての症状をアレルギーの観点からチェックできる『トータルアラジスト』の育成が日本では急務なのです」(永田さん)
(編集部・福井洋平)
※AERA 2017年4月24日号