体がダルい。どうにも頭が重い。でもはっきりと名前が付く病気というわけではないから、病院には足が向かない。そもそも、平日の昼間に仕事を抜け出す余裕なんかあるわけない。これが、過剰労働社会ニッポンの「現実」だ。AERA 2017年4月24日号では「ダル重」を大特集。あまたある健康ビジネスに踊らされることなく、このダル重を解消するには、どうしたらいいのだろうか。
ダル重の原因が、実はアレルギーだったというケースが増えている。しかし、国内では、アレルギー専門医が足りていないのが現状だ。埼玉医科大学病院アレルギーセンターの永田真センター長に、今後、日本の医療がクリアすべき課題について語ってもらった。
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東京・池袋から電車で1時間、さらにバスで5分。埼玉県毛呂山町にある埼玉医科大学病院には、全国各地から花粉症やアレルギー性のぜんそくに悩む患者が集まってくる。症状を軽減させる「アレルゲン免疫療法」を、短期間入院する方法などで行っているからだ。家庭のホコリの中にいるダニや、スギ花粉などアレルギーを引き起こす原因物質を少しずつ注射したり、舌下に含ませたり(舌下免疫療法)して症状を起きにくくする。スギ花粉は2014年、ダニは15年に、舌下療法の保険診療が認められるようになった。
体質が変わり、対症療法薬を使わなくてもすむようになる可能性のある原因療法だが、国内ではなかなか広がらない。
「アレルギー専門医が足りないからです」
埼玉医科大学病院アレルギーセンターの永田真センター長は、そう語る。舌下療法を行うためには講習を受ける必要があり、注射治療も「現状ではある程度専門の医師でなければ、施行していません」(日本アレルギー学会)。だが日本では、アレルギー専門医の数はわずか3348人。日本各地に「アレルギー科」を標榜する医院があるが、多くはアレルゲン免疫療法を行えない「専門外医」と永田さんは言う。