AERA 2017年4月24日号に登場した作家の湊かなえ。撮影は蜷川実花
AERA 2017年4月24日号に登場した作家の湊かなえ。撮影は蜷川実花

「今度はこんなことをしてきたのか。読者をそんなふうに驚かせたい」

 衝撃作「聖職者」を世に出して10年。初の新聞連載小説で青春ものに挑むなど、作家としての新たな地平を切り拓き続けている作家の湊かなえが、AERA 2017年4月24日号の表紙に登場。単独インタビューに答えた。

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「最後のページでどんな顔をするだろう。一番驚いた顔をしてもらうにはどうしたらいいだろう。そんなふうに読者の反応を想像することが、執筆の原動力になっています」

 文庫化され、連続ドラマの放送も始まった『リバース』には、まさに驚愕の結末が用意されている。ラストの設定をこういうふうに、と編集者にお題を出されて書いた初めての作品であり、長編で初めて男性を主人公にした作品でもある。こう振り返る。

「新しいことに二つ挑戦しました」

 今年、デビュー10周年。

「読者がいなければ私が本を書く意味なんてない」

 と言い切る彼女は、その記念のサイン会で47都道府県を回る。

「10年間しんどかったけれども、こうしてまだ作家を続けていられるのは読んでくださった方がいるから」
 そんな感謝の思いからだ。

「サイン会は本と読者と私がいればできるので、都会だけでやる必要もないのかなと。読書離れも進んでいる中、作家と話す機会を設けることで自分の作品だけでなく、書店や本を好きになってくれる人が増えるんじゃないかと思って」

 地方を意識するのは、自らも兵庫県の淡路島で暮らしているからだ。地方で作家活動を続ける自分と直接会うことで、どこに住んでいても小説は書ける、それならば自分もなれるかもしれないと、多くの人に思ってもらいたいという。

 夫と娘との3人暮らし。日中は主婦、夜10時ごろから明け方の3時ごろまでは作家と、二つの顔を使い分けている。

「家庭があって地方で普通に生活しているからこそ、自分のような考え方をする人がたくさんいて、小説を通して私が考えたいことが、多くの人にとっても考えたいことになり得るんじゃないか、と思うんです。作家じゃない自分の生活をまず大事にしないと小説は書けない。そう思っています」

(編集部・山口亮子)

AERA 2017年4月24日号