任意売却は競売よりも有利な点が多いとはいえ、住み慣れた自宅を手放すのはつらい選択だ。須山弁護士は、条件によっては自宅に住み続けられる道もあると話す。

「任意売却は、マイホームを維持しながらの生活再建が可能かどうかを検討してからでも遅くはない。支払い条件が緩和されれば何とかなるなら、まずは金融機関に返済条件の変更(リスケ)を申し込むという選択肢があります」 

 リスケには、返済期間の延長と一時的な返済猶予の二つの方法があり、例えば残り15年のローンを10年延長してもらったり、1年間だけ元金据え置きで利息だけを返済するといった変更を認めてもらったりすることで、月々の返済負担を減らすことができるという。

 ただし、リスケには審査があるうえ、ローンそのものを減額できる制度ではない。支払期間が長くなったり、優遇金利が適用されなくなったりすることで、総支払額が増加するといったデメリットもある。

「子どもの受験や進学で一定期間だけ家計が苦しいときや、配偶者も働きだせば返済が可能となるような場合に利用されることが多い」(須山弁護士)

●住み続ける選択肢を

 住宅ローンの支払いが困難になったケースの中には、キャッシングや銀行のカードローンなど高金利の借り入れをして住宅ローンの返済にあて、その借金が膨らんでいるケースも少なくない。

 また、子どもの受験や進学で多額の教育ローンを組んだばかりに行き詰まるケースもある。こうした住宅ローン以外の負債が減少すればなんとかなりそうな場合には、いわゆる「住宅ローン特則付きの個人再生申し立て」という制度を活用する余地があると須山弁護士はいう。

「裁判所を通じて債務を減額してもらう個人再生手続きの特則で、住宅ローン以外の負債を大幅に圧縮することで住宅ローンを支払えるようにし、結果的にマイホームを維持できる制度です」

 減額される額は負債の額によって異なるが、住宅ローン以外の負債が500万円以上1500万円以下の場合は、最大5分の1にまで圧縮され(小規模個人再生の場合)、これを原則3年で返済する。ただし、減額されるのは住宅ローン以外の負債だけなので、元々住宅ローン自体の支払いが不可能になっている場合はこの特則は利用できない。

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