●「つなぎ」としての駅
明らかになったのは、「東高西低」の傾向だ。
東京都の抗議を受けたJR東日本は、一時滞在施設に移るまでの居場所として東京30キロ圏内の約200駅を開放することを決め、その駅名をホームページで公開している。これらの駅には、主に高齢者や幼児などの災害弱者を想定し、飲料水や非常用食料、防寒・救急用品など6万人分を配備したという。
ほかにも、東日本の多くの鉄道会社・事業者が、駅を開放したり、開放はしないまでも自治体などが一時滞在施設を開設するまでの「つなぎ」として駅の一部を提供したりすると答え、物資も備蓄しているのに対し、西日本では大手民鉄の阪急、南海、阪神、京阪のいずれも「駅を開放する」とは明言せず、備蓄もしていなかった。
「要請があれば検討するかもしれないが、駅での人の滞留は想定していないので今のところは備蓄はない」(阪神電鉄)
など、東西の意識にはまだ差があるようだ。
駅は誰もが場所を知るランドマーク。いざというときに「あそこに行けばいい」と思えるだけで安心だ。一方で、鉄道会社・事業者にとって、優先課題は鉄道の復旧。駅を開放すると回答し備蓄もしている東京メトロでも、安全・技術部防災担当課長、町田武士さんはこう話す。
「帰宅困難者は、地方自治体が開設する一時滞在施設などに案内し、できるだけ早期に地下鉄の運転再開ができるよう復旧作業を進めていく」
防災システム研究所所長の山村武彦さんも言う。
「東日本大震災では、JR仙台駅の天井が落ちたり配管が壊れたりして、立ち入り禁止になりました。一度の地震で終わればいいが、熊本地震のように連続すれば、さらに破壊される危険があります」
駅はあくまでも、自治体などによる一時滞在施設開設を待つための「ステップ」だということだ。