深刻な状況にもかかわらず、社会の変化はあまりに鈍い。女性に家事労働が集中し社会進出を妨げている状況を13年に著書『家事労働ハラスメント』で告発した和光大学の竹信三恵子教授(社会学)は、
「家事労働の問題はずっと経済学の『傍流』扱いだった」
と語る。その結果、政治の動きも鈍いままとなった。
「政策の意思決定をしている人は家事をしていないから、負担の深刻さがわかっていない」
●知恵を育み人を鍛える
竹信教授は、家事の負担は家庭と企業、行政の三つの主体が分担する必要があると説く。特にいまようやく問題となりつつあるのが企業のあり方。男性を長時間労働により会社に縛り付けていることが、家事負担の不公平感を増幅させていることは間違いない。この点を指摘した『家事労働ハラスメント』に対しては、男性側からも「自分たちが家事をできない原因はやる気だけの問題じゃないと示されてよかった」という反応があったという。
「職場が家庭にツケを回している現状は改めたほうがいい」(竹信教授)
前出の小泉さんは「家事は知恵を育み、人を鍛える大事な仕事。かつてのようにすべての家事を担うことはできなくても、できる家事を選択してしっかりやるのが大切」と言う。それを実現するためにも、家事の過負担化の是正は急務なのだ。次ページからは軽減の切り札ともいえる家事外注の現状と、家事参加率の低い男性をどう家事に参加させて不公平感をなくしていくかについて取り上げる。(編集部・福井洋平、金城珠代)
※AERA 2017年2月13日号