高速で回っているプロペラが太い給油ホースに当たり、切断すれば、その3枚の羽根の1枚は折れるか曲がるから、オスプレイは激しく振動し、飛行は困難になる。普天間飛行場まで戻るのは危険だが、夜間に外洋に降りれば5人の乗員の発見、救助は容易ではないから、なんとか海兵隊駐屯地近くの海岸にたどりついたのだろう。

●長距離侵攻の訓練か?

 近年は一部のヘリコプターもこれと同様の方法で空中給油を受けるようになった。航空自衛隊の救難ヘリUH60も受油パイプをつけ、2機あるKC130と海上で訓練をしている。ヘリコプターは機体の両側面に障害物がないし、胴体の上の回転翼と胴体下部から出す受油パイプの高低差は約3メートルあるから、オスプレイに比べれば空中給油の危険は低い。

 オスプレイは兵員24人と装備を積んだ「強襲揚陸時」で950キロの航続距離があり、空中給油は上陸作戦にはまず必要なさそうだ。今回の事故の際、給油していたのは米海兵隊岩国基地のKC130ではなく、空軍の特殊作戦用のMC130と公表された。嘉手納基地には第353特殊作戦航空群のMC130がいて、その新型MC130Pはオスプレイへの給油装置を搭載している。夜間の空中給油訓練は、2011年5月、米海軍特殊部隊がパキスタン北部アボタバードでオサマ・ビンラディンを殺したような長距離侵攻に不可欠だ。沖縄の米海兵隊もそれに加わる想定があることを示すものかもしれない。

 17年中には米空軍の特殊作戦用のオスプレイ、CV22が3機、横田基地に配備され、21年までに10機と特殊部隊や整備員など約400人が横田に駐屯する計画だ。CV22は夜間に超低空飛行をするため、「地形追随・障害物回避レーダー」を装備し、相手のレーダーに探知されないよう谷間を縫って飛ぶ。長野県から新潟県にかけ、日本アルプス付近を通る「ブルー・ルート」などが訓練に使われそうだ。この訓練をするCV22の事故率は海兵隊のMV22より当然高い。少なくとも陸地上空での空中給油はさせないことが必要だ。(軍事評論家・田岡俊次)

AERA 2017年1月2-9日合併号

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