●心配なのは「彼」の気性
一方、ワシントンの連邦議員を対象に、核軍縮のためのロビー活動を長く続けてきたフレンズ・コミッティー・オン・ナショナル・レジスレーション(FCNL)のロビイスト、デビッド・カルプ氏は、「すべてが未知数」としながらも、こう言う。
「心配されるトランプ氏の気性について、最初に試すことができるのは、北朝鮮の核ミサイル実験だ」
カルプ氏は、北朝鮮が2009年、オバマ大統領の就任式後に、長距離弾道ミサイルの実験を実施し、さらに13年、2期目の就任式直後に核実験を行ったとし、「トランプ氏の就任式後に、何らかの動きがあるのは、パターンとして考えられる。その際に、トランプ氏がどう対応するかが、最初のリトマス紙だ」とする。
また、意外な面での懸念も浮上している。トランプ氏は、ツイッターを利用して、個人攻撃をするので有名だ。同氏は、中西部インディアナ州で、空調大手キヤリアとともに、同社が海外移転に伴い削減するとしていた「1100人」を救済すると得意げに発表した。しかし、その直後、全米鉄鋼労働組合(USW)の地方支部委員長が、「730人」しか救われないとメディアに語った。トランプ氏は即座にツイートで、彼を攻撃した。
「委員長は従業員の代表として、ヘマをした。会社側が、海外に移転しようとしても、不思議ではない!」
カルプ氏はこう言う。
「取るに足りない組合委員長の発言を攻撃し、それが全米規模の攻撃につながった。国家の政策面でこんなことが起きたらどうなるのか」
トランプ政権に「未知数」は多いが、核兵器という人類全体にとっての問題を、彼がどう扱うのか。日本政府も新たな対応を考えるべき時が来ている。(ジャーナリスト・津山恵子)
※AERA 2016年12月26日号