トランプ次期大統領の閣僚人事が次々と決まる中、危機感を強める人たちがいる。核軍縮関連のスペシャリストたちだ。
「あの人物(=ドナルド・トランプ氏)が大統領となり、彼の指が核兵器の発射ボタンにおかれるというようなことが、起きてもいいのか!」
トランプ氏と激しい選挙戦を展開したヒラリー・クリントン氏は、選挙集会で度々こう訴えていた。
米大統領は、米国の「最高司令官」として、核兵器使用の最終決断をする。オバマ大統領が今年5月、被爆地広島への歴史的訪問を果たし、被爆者をハグしていた瞬間も、彼の傍らに「核のボタン」があった。「核のフットボール」と呼ばれる黒いスーツケースを側近が携行し、どこにいても核攻撃を指示できるように必要な手続きやコードの書類などが入っている。
●使うのか減らすのか
核攻撃を決断できる立場にトランプ氏が就任するのを「クレージー」と言うのは、アメリカン大学歴史学部教授・核問題研究所長のピーター・カズニック氏だ。戦争・基地問題に関して米政府を批判している、ベトナム帰還兵でもある映画監督オリバー・ストーン氏と、沖縄や広島、長崎などを訪れたことがある。
「トランプ氏は、読書をしない。知識もない。『核兵器があるなら、なぜ使わないのか』と選挙戦中に言った。今後(トランプ氏の任期である)4年間、人類にとってのゴールは、とにかく生き延びることだ」
と、厳しい見方をする。逆に、「グッドニュース」もあるかもしれない、とも言う。トランプ氏は、ロシアのプーチン大統領を選挙戦中も礼賛し、国務長官に、プーチン氏をよく知る、エネルギー大手エクソンモービル最高経営責任者(CEO)のレックス・ティラーソン氏を指名した。トランプ政権が、プーチン氏ときちんと対話できる関係を築くことができれば、
「核兵器の削減を、オバマ大統領時代よりも進めることができるかもしれない」
とカズニック氏。
「(核兵器使用で一時的に氷河期が訪れるという)核の冬を起こすことができないほど、核兵器を削減できればと願っている」