東北医科薬科大学の小松島キャンパス。医学部は3年生から附属病院のある福室キャンパス(建設中)で受講する(撮影/塚崎朝子)
東北医科薬科大学の小松島キャンパス。医学部は3年生から附属病院のある福室キャンパス(建設中)で受講する(撮影/塚崎朝子)
医学部の新設を認可するのは文部科学相だが、2校の計画の背景には震災復興や国家戦略特区という国を挙げた政策があった(撮影/写真部・大野洋介)
医学部の新設を認可するのは文部科学相だが、2校の計画の背景には震災復興や国家戦略特区という国を挙げた政策があった(撮影/写真部・大野洋介)

 30年以上、認められてこなかった医学部の新設が今春、来春と2年続けて実現する。さまざまな期待がかけられる一方、課題も見え隠れしている。

 2016年春、杜の都・仙台に国内で37年ぶりの医学部が誕生した。5年前の東日本大震災で地域医療も被害を受けた東北地方を支援する特例として、単科大学の東北薬科大学が新設。東北医科薬科大学に改称した。

 100人の定員に対し、初年度の実質の受験倍率は7.7倍と高かった。目玉は、医師を東北地方に定着させるための修学資金だ。

●関東からも多数入学

 学費は6年間で総額3400万円かかるが、これを国公立大並みの400万円に抑えられる返還不要の奨学金を35人分用意した。卒業後10年程度は東北地方に勤務するという条件を付け、宮城県の枠(定員30人)に加え、他の東北5県の枠(同5人、各県1人)もあり、東北地方の医療を担う志があれば、出身地を問わず出願できる。卒業生を受け入れる病院が返済することで、資金を循環させる仕組みだ。最大で800万円以下に抑えられる枠も20人分設けた。

 カリキュラムでは、地域医療に重きを置く。東北6県に実習先となる19の地域医療ネットワーク病院を配し、繰り返し訪ねる滞在型学習が特徴だ。災害医療も重視し、原発事故時の対応を学ぶシミュレーション訓練なども採り入れる。

 初代医学部長の福田寛氏は、「自治医科大学を除けば、地域医療をトップに据える唯一の大学として使命を果たしたい」と意気込む。

 16年度の1期生のうち、東北出身者の割合は受験者・合格者とも全体の3割強。人口の多い関東圏の学生が多い。彼らが東北に定着してくれれば、医師不足に悩む地域の朗報になる。

 医学部を新設しようという機運は、大震災の前から国内で高まっていた。05年ごろ、救急患者のたらい回し、自治体病院の閉院または診療科の廃止など、いわゆる医療崩壊が表面化。日本はOECD諸国に比べて人口当たりの医師数が少ないことも問題視された。

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