●英国型の皇室にカリスマ求める心

姜:天皇制について明確に言うのはちょっとはばかられるんですが、イギリス並みに、皇籍離脱も離婚も現実的に可能なようにすることも考えられますね。近代以降、男系中心の家父長制的なものになりましたが、古代の天皇制を見ると女性もいて非常に奔放なことがやられていますし。もっとそれを開いていけば、限りなくイギリスに近づいていくのではないかと思います。

内田:そうですね。国民的アイデンティティーを担保してくれるものは政治的な装置じゃなく、神話的で宗教的な統合軸なんだと思います。21世紀になっても天皇や国王が残っている。それを廃した国でも、今度は大統領が皇帝や国王のようにふるまっている。人間って、やっぱりこういう幻想がないと生きていけないのかなって思いますね。

姜:ウェーバーの有名な「カリスマ的支配と合法的支配と伝統的支配」とよく言われますけれど、普通だったら社会が進化していけば、合法的支配となりそうなのに……。

内田:ならないんですよ、人間って不思議です。

姜:やはりカリスマ的なものやトラッドなものを欲しがる。私たちの共著『世界「最終」戦争論』(集英社新書)の中でも内田さんが言ってくれている通り、フランスは戦後処理を曖昧にしています。ドイツの場合は、やっぱりナチズムを許したという歴史的なところに、彼らのアイデンティティーを置いているわけですよね。それであのような賢明な政治制度になっているのでしょう。今後、フランスで極右のマリーヌ・ルペンが出てきた場合、それからアメリカでトランプが大統領に選出されたらどうしますか(笑)。

内田:それは悪夢ですね(笑)。悪夢のような世界に立ち向かって、正気で生きる方法を探るしかないですね。

(構成/編集部・三島恵美子)

※この対談は、7月12日に紀伊國屋書店新宿本店で行われた『世界「最終」戦争論 近代の終焉を超えて』刊行記念トークイベントの内容に加筆・再構成しました。

AERA 2016年9月19日号

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