別のクラスでは、音楽の授業を日本人と外国人の子どもたちが一緒に受けていた。グループでリコーダーの練習をするため、音楽の先生から指示がとぶ。
「お互いの顔を見ながら、円をきれいにつくってみて」
すかさず、ESTから英語で同じ指示が出る。
“Face each other and make a circle.”
リコーダーを手に取って子どもたちが演奏を始めると、ESTは教室の中を回って外国籍の子どもたちに声をかけていく。指が動かず、まわりをキョロキョロ見ている男の子のそばまで行き、
“Do you get it? Don’t worry, I will help you.”
と話しかけると、その子は安心したようにニッコリ笑って、演奏に集中しはじめた。
●「体育座り」も教える
東町小が全学年に「国際学級」を設置し、外国籍の児童を積極的に受け入れるようになったのは、今から4年前のことだ。現在は、中国、米国、ポーランドなど15カ国から日本にやってきた外国人児童42人が通っている。二重国籍や帰国子女の児童を合わせると、その数は154人にのぼる。
区の取り組みで英語での教育環境が整備されたのは学習の継続が維持できるからだと、羽田野庸史校長は話す。大使館などが多く集まる港区では、日本に長く滞在せずに、保護者の仕事の関係で他国に移ったり、母国へ帰ったりする外国人児童の家庭がある。こうした子どもたちにも日本の公教育を受ける機会を広げるのもねらいだ。
英語での授業や校内に貼られたさまざまな英語の掲示物を見ていると、インターナショナルスクールにいるような錯覚を覚えるが、村松静香教諭は、「体育座り」や掃除の仕方など日本の学校独自のきまりや風習も説明し、一緒に指導するという。
「日本人はこう、外国籍の子どもはこうと子どもたちの前で言ったり分けたりするのではなく、日本の公立学校で行うごく当たり前の指導をしています」