「憲法の規定を超える形で『常に国民と共にある』天皇たらんとする姿勢には、昭和天皇が玉音放送で護持されたとする『国体』が継承されているようにも見えます」
「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」の部分からは、
「代替わりしても、祭祀と行幸啓を中核とする平成流の皇室を変えることを禁じるような表現。自らが築いた象徴天皇のあり方はきちんと継承されるのか、という強い不安が読み取れます」
と話す。一方で、『明仁天皇と平和主義』(朝日新書)の著者、学習院大学の斉藤利彦教授(近代日本教育史)は、
「今回のお言葉は、玉音放送とは明らかに違います。一方的なメッセージではなく、結びの言葉は『国民の理解を得られることを、切に願っています』。国民との対話を第一にお考えになり、ご自身の判断で新しい皇室を創造的に切り拓(ひら)いてこられた陛下ならでは。一貫性を感じます」
と理解を示す。評価は歴史が下すことになるだろう。いずれにせよ、事態が動き出したことは間違いない。(編集部・古田真梨子、澤田晃宏、竹下郁子)
■天皇の公務
<国事行為>
すべての国事行為には内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負う(憲法第3条)。毎週2回ある閣議後、内閣から届く書類に署名・押印する
・国会の指名に基づく内閣総理大臣の任命(憲法第6条)
・内閣の指名に基づく最高裁判所の長たる裁判官(長官)の任命(憲法第6条)
・憲法改正、法律、政令及び条約の公布(憲法第7条、以下同)
・国会の召集
・衆議院の解散
・国会議員の総選挙の施行公示
・国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状の認証
・大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権の認証
・栄典(文化勲章や大綬章など)の授与
・批准書及び法律の定めるその他の外交文書の認証
・外国の大使及び公使の接受
・儀式(新年祝賀の儀、即位の礼、大喪の礼など)
<公的行為 式典や行事への出席など>
[主な恒例行事など]
・新年一般参賀
・講書始の儀
・歌会始の儀
・天皇誕生日祝賀・一般参賀
・園遊会
・全国戦没者追悼式
・日本学士院授賞式など
・国賓などとして来日した外国の賓客との会見や晩餐会
[国内外への訪問]
・全国植樹祭
・国民体育大会
・全国豊かな海づくり大会
・東日本大震災などの被災地お見舞い
・戦没者慰霊の旅
・福祉施設での激励
・企業や学校、研究施設、農家などの視察
<私的行為 プライベートな外出や宮中祭祀など>
・趣味のテニスやドライブ、散策
・御用邸や御料牧場などでの静養
・ハゼなど魚類の研究
・新嘗祭など年間約20件の宮中祭祀
※AERA 2016年8月22日号