「公の存在である天皇ご一家とはいえ、互いを愛(いと)おしく思いやるふつうの家族と変わらないということ。ご家族みなさんで熟慮された結果、皇太子さま、秋篠宮さまはもちろん、雅子さま紀子さまも、今後起きうる事態に対して、それぞれ覚悟を決めておられることと思います」

 関係者によると、皇太子さまが退位の意向を伝えられたのは昨年。時を同じくして、雅子さまは月に2度の地方公務にあたったり園遊会に出席したり、活動を積極化させている。

 7月23日には、陛下は皇居・御所で、皇太子さま、秋篠宮さま、長女の黒田清子さんと昼食をともにし、お気持ちの表明にも言及したとみられる。つまりお言葉は、一家の意思統一を受けて、「象徴天皇」という一大事業の次世代への継承プロジェクトが本格的に始動することを広く知らしめる号砲だったのだ。

●お言葉には違和感も

 人々はおおむね、陛下の意向を好意的に受け止めた。朝日新聞の世論調査では、「生前退位」の制度化に84%が賛成。作家の半藤一利さん(86)は言う。

「よくぞご決意された。長いお務めご苦労さまでした。昨年のパラオ訪問など心に秘めたことをやり遂げて、納得された上でのお考えでしょう」

 安倍晋三首相も「重く受け止めております」と語り、政府は有識者会議を9月後半をめどに設置し、皇室典範の見直しを含めた検討に着手する方針だ。

 もし、陛下の意向を重視して「生前退位」に道を開くのだとすれば、それ自体は難しいことではない、と前出の小田部教授は話す。皇室典範に退位に関する規定はなく、第4条に「天皇が崩じたときは、皇嗣(こうし)が、直ちに即位する」とある。「崩じたとき」に「天皇が望み、かつ皇室会議の賛意を得たとき」という文言を加え、第5条の「皇族」に「太上天皇」を加えるなど最低限の必要な措置をすれば退位は可能だと小田部教授。通常の法改正同様、国会で審議し改正案を可決、成立させればいい。

「早ければ来夏くらいには実現するのではないか。生前退位に加え、皇位継承順位、女性・女系天皇をめぐる問題、将来の天皇となる人材の教育方法などさまざまな議論が一気に噴出していますが、まずはシンプルに考えるべきです」(小田部教授)

 ただ、『「昭和天皇実録」を読む』(岩波新書)などの著書のある放送大学の原武史教授(日本政治思想史)は、今回のお言葉に強い違和感を抱いている。

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